医療・ヘルスケアの個人、スタートアップを主役に

次世代営業・マーケティングモデルへの転換(他業界の先進事例を踏まえて

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国内外の製薬会社においてMR業務に従事。2012年には国内5%表彰にあたるJapan Salse Excellence Awardを受賞。その後、外資系コンサルティング会社にて、製薬企業の営業・マーケティング、PV、PMS部門の戦略策定から組織・人変革、BPRまで幅広い業務に従事。 現在は、独立しヘルスケアスタートアップ、製薬会社の営業・マーケティング、新規事業開発を中心に、コンサルティングを実施。
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記事の概要
今回の記事はこんな人のために書いています

  • 製薬・ヘルスケア業界で次世代の営業マーケティングモデル構築に悩むマーケティング責任者
  • 製薬・ヘルスケア業界の現場で試行錯誤を繰り返すMR

今回の記事を読むと以下のことが分かります

  • 製薬・ヘルスケア業界で求められる次世代営業マーケティングモデルの要件
  • 他業界における先進事例

こんにちは、スターコネクトコンサルティングの水本です。

この度、製薬業界向けの営業マーケティングの業界専門誌のMonthlyミクスで2020年11月号より全4回の連載を行うことになりました。

連載へのリンクはこちら

今回の連載は、以下の内容で全4回を考えています。

  1. 次世代営業・マーケティングモデルへの転換(他業界の先進事例を踏まえて)
  2. 医療ヘルスケア領域における先進事例
  3. 次世代営業マーケティングモデル構築に向けた提言(3つの提言)
  4. 現場MRに向けた提言(今こそ新時代のMR像を発信するチャンス)

第一回は、「次世代営業・マーケティングモデルへの転換」として、「医療・ヘルスケア業界における次世代営業・マーケティングモデルとは何か?」について考えたうえで、他業界の先進事例として、世界No1 MA(マーケティングオートメーション)を販売する「ハブスポット」の営業マーケティングモデルについて解説しています。

はじめに

「この先、本当にこのままで良いのだろうか?」――。私が現場でMRとして活動していた2010年当時、医局に戻る医師を待つ病院の廊下で時折頭に浮かんでいた疑問でした。

当時は生活習慣病薬全盛の時代。各社のMRが訪問数最大化の為に朝昼晩とこぞって病院に押しかけていた時期でもありました。私自身もようやくMRの仕事に慣れ、充実してやりがいも感じていた時期でもあります。だからこそ、もっと良い情報提供のあり方は無いのかと考え、答えを求めていた時期でした。

あれから10年――。COVID-19をきっかけに医療・ヘルスケアの営業・マーケティングは大きく変貌を遂げようとしています。現場のMRの皆様も冒頭に記したような悩みを抱え、日々試行錯誤を繰り返されている方も多いのではないでしょうか?

本連載は、2010年当時、私自身がMR活動の現場で感じた疑問や課題をベースに、その後の外資系コンサルティング会社での経験や、独立後のヘルスケアスタートアップの支援を通じて感じた次世代営業・マーケティングモデルの在り方について述べたいと思います。特に、現場で試行錯誤をし、次世代のMR像を模索されている皆様から忌憚ないご意見を頂戴し、次世代の営業・マーケティングモデルを共に考えていきたいと思っています。

連載の第1回目では、「次世代営業・マーケティングモデルへの転換」として、「医療・ヘルスケア業界における次世代営業・マーケティングモデルとは何か?」について他業界の先進事例とともに考えてみたいと思います。

もうコロナ以前の営業マーケティングモデルには戻れない

「7割以上」――。突然の質問で恐縮だが、この数字は何を示しているでしょうか。こちらはミクス編集部がCOVID-19下で製薬企業各社に行ったアンケート調査(製薬企業65社から回答)の結果です。

「新型コロナをきっかけにMR像や情報提供の在り方は変わるか?」の問いに対し、7割の製薬企業が「変わる」と答えました。この調査結果を見る限り、7割の製薬企業が変革のギアを1段階高めたと読むことができます。そして変革の波はコロナが終息した後も、以前のようなモデルに戻れないことを印象づけています。

では、我々が直視すべき未来像はどこまで描けるでしょうか。

「ポストコロナに求められる営業・マーケティングモデルとは具体的にどの様なものか?」と聞かれ、現時点で明確な答えを出せる方は少ないのではないでしょうか。

いま多くの製薬企業がデジタル化を模索しています。「eとリアルの融合が進む」、「デジタルツールを使いこなせるMRが今後は求められる」等のキーワードを耳にする機会が増えました。デジタルツールの導入を当初の計画を前倒しして進める企業も増加したと感じます。

働き方改革を踏まえ、人財の効率化も各社進めています。その一方でMRの新たな役割の定義を含めた「組織・人財」に関する抜本的な取り組みに踏み切る企業はまだ多くはないと感じています。

では、「ポストコロナに求められる次世代営業・マーケティングモデル」とは具体的にどの様なものでしょうか?

ポストコロナに求められる
営業・マーケティングモデルの要件「高効率」「高度化・個別化」「マルチチャネル」

「ポストコロナに求められる次世代営業・マーケティングモデルとは何か?」という疑問に答える前に、まずは製薬業界における環境変化を踏まえ、次世代営業マーケティングモデルに求められる「要件」について考えてみたいと思います。

以下に示しますように、次世代営業マーケティングモデルに与える環境変化として、①薬価制度抜本改革・ブロックバスターモデルの終焉、②スペシャリティ・オンコロジー中心のパイプライン、③COVID-19による対面営業の一時的中断――を挙げます。

それぞれの課題について、ここでは詳しく述べませんが、これら環境変化により、「人海戦術」・「SOV」・「MRシングルチャネル」といった従来型営業マーケティングモデルから、「少数精鋭・高効率」、「個別化・高度化」、「マルチチャネル」型の次世代営業マーケティングモデルへの転換が求められるようになりました。

これらのキーワード自体は業界関係者であれば、これまでも何度も耳にしてきたと思います。ではこれらのキーワードを具体的に体現する、営業・マーケティングモデルについて、実際に私が顧客として体験した企業であり、正に上記要件を体現していると感じた事例をご紹介します。

ポストコロナに求められる営業・マーケティングモデルとは
「“効率性”と“専門性”を兼ね備えた、職種間“共業”プロセス」
リード獲得~受注~フォローまでを完全オンラインで実現するハブスポット

今回事例として紹介するハブスポット(HubSpot)は、2004年に創業されたインバウンドマーケティングのプラットフォーマーです。

日本ではセールスフォースドットコムの認知度が高いが、この会社はグローバルでNo1のMA(マーケティングオートメーション)を提供しており、2016年に日本法人を設立し、日本市場に本格参入を果たした企業でもあります。

私が初めてハブスポットと出会ったのは2019年。その時に一番驚いたのがその営業体制でした。

COVID-19後の今では珍しくなくなりましたが、ハブスポットは2016年の日本法人設立の頃から、「“完全”オンライン営業」を行ってきました。いや珍しくなくなったと言いましたが、今でも「完全」オンライン営業、つまり顧客の元に1度も訪問することなく、「見込み客開拓、ヒアリング、デモ、受注、受注後フォロー」の一連の流れを実施する企業はそう多くはないのではないでしょうか。

読者の皆様の中には、「説明のあまり必要ないシンプルな商品」、「競合が存在しないニッチな領域だから可能」、と思われる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

しかしハブスポットが扱っている商品は、「マーケティングオートメーション」であり、詳細な説明を必要とする製品で、受注・導入・運用に一定のコストがかかる商品です。また、競合メーカーは対面営業部隊を多く抱えていることが一般的である点を考えると、ハブスポットだからできたというだけでは説明がつかないと思います。

他業界の事例とはいえ、「高度な説明が要求される製品」を「競合がひしめくMA業界」で「完全オンライン営業」にて日本を含む全世界で成長を実現している点は、参考になる部分も多いのではないでしょうか。

分業により営業の効率性・専門性を最大化

以下にハブスポットの営業・マーケティングモデルを示します。

ハブスポットの営業・マーケティングモデルというのは、一言でいうと「効率性と専門性を兼ね備えた“共業”プロセス」です。

簡単な流れは、「インサイドセールス」が獲得した有望アポイントを「セールス」が面談・採用まで行い、「カスタマーサクセス」が導入先の顧客をフォローし、長期的な関係を構築する、という流れです。

従来の営業・マーケティングモデルでは、初回訪問~採用~フォローまでの全てのプロセスを一人の営業 担当者が行うというプロセスではなかったでしょうか?

しかし、電話営業が得意な担当者、クロージングが得意な担当者、長期間に渡り顧客と関係性を構築することが得意な担当者では、それぞれに求められる能力は異なるはずです。また、これら全てのプロセスにおいて一人の担当者が、高い専門性を身に着けるには相応の時間を要します。

更に製品の情報提供ニーズが低い顧客から高い顧客まで手あたり次第訪問をするのではなく、一度インサイドセールスがweb面談でしっかりとヒアリングを行い、ふるいをかけることにより、より注力すべき顧客にリソースを集中することが出来ます。

以上の様に、「効率性」「専門性」の観点から、従来営業担当者が一人でやっていたプロセスを「インサイドセールス」「セールス」「Cサクセス」の3つの役割に分けて業務を分担、連携することにより、「効率性」と「専門性」を同時に高めることに成功しています。

読者の中には、「本当に完全オンラインで受注(採用)まで実現できるのであろうか?」と疑問に思う方も多いと推察するため、今回は特に上記プロセスの中で「アポイント取得から契約」までのプロセスについて見ていきたいと思います。

アポイント取得から契約までを完全オンラインで実現

ハブスポットの、受注までのプロセスは大きく「インサイドセールス」「セールス」の2つで構成されています。

1人のインサイドセールスに対し、3人のセールスがペアになり、インサイドセールスが電話等でアポイントを創出し、「セールス」に渡していき受注まで行います。

もう少し詳しく業務の流れを示したのが以下の図です。ここで特筆すべきは、受注までのプロセスがフェーズに分けて「見える化」されていることです。各フェーズで「移行判定基準」「確度」「聴取すべき事項」が定義されており、各顧客の「課題・ニーズ」を「フェーズ」で管理し、「見える化」されているのが特徴です。

 

1.    自社製品やサービスに関する「専門性」を示すこと
2.    顧客の市場における「課題」についての深い理解度を示すこと
3.    顧客の課題について、「自社独自の解決方法」を提示する事
(出典:How to Sell In Place:Closing Deals in the New Normal)

一般的に直接訪問を行わないオンライン営業においては、顧客との信頼関係構築に際して上記3つが重要視されています。

つまり、対面による「個人的な関係」に基づいた信頼関係から、「専門性と顧客のニーズ」に基づいた信頼関係が重要になります。顧客のことを個人的に気にかけていることを示しながら、相手の問題に対する解決策を示すことで、自分の専門知識を基に信頼関係を構築できるというわけです。

このことを前提とするならば、オンライン営業においては、「顧客の状態(どの段階にいるか?)」と「課題・ニーズ」により気にかけたうえで、「高度な専門情報」を提供する必要が出てきます。直接のコミュニケーションが出来ない「オンライン」で「インサイドセールス、セールスの担当者間連携」を前提に考えると、「案件の見える化」は非常に重要なポイントになってきます。

「完全オンライン」かつ、「複数の担当者間でやり取り」するモデルを成立させる為の一つの成功要因として理解頂ければと思います。

本モデルは製薬業界でも適用可能か?

ここまで、他業界の事例としてハブスポットを例に、“完全オンライン”で製品導入までを実現するハブスポットの営業・マーケティングモデルについて見てきました。

これは他業界だから成立していると思われる方も多いのではないでしょうか?

実際に私も独立前の外資系コンサルティング会社に勤務する3年前までは、本モデルに対し条件的賛成という立場でした。受け手側である医療関係者がデジタルでのコミュニケーションに心理的な要因を 含めたハードルが存在する場合、全体への普及には時間を要すると考えていました。しかし、COVID-19によりその前提は大きく崩れたのは皆ご承知の通りだと思います。

次回は「本営業マーケティングモデルは製薬業界でも適用可能か?」という点について、医療・ヘルスケア領域の先進事例として、私が支援した、あるヘルスケアスタートアップの営業マーケティングモデルの事例を紹介し、本モデルを製薬業界で適用するうえでの論点について、提示したいと思います。

⇒第二回:「製薬ヘルスケア領域における先進事例」を読む

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