医療・ヘルスケアの個人、スタートアップを主役に

製薬・ヘルスケアにおける次世代営業・マーケティングモデルの先進事例

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国内外の製薬会社においてMR業務に従事。2012年には国内5%表彰にあたるJapan Salse Excellence Awardを受賞。その後、外資系コンサルティング会社にて、製薬企業の営業・マーケティング、PV、PMS部門の戦略策定から組織・人変革、BPRまで幅広い業務に従事。 現在は、独立しヘルスケアスタートアップ、製薬会社の営業・マーケティング、新規事業開発を中心に、コンサルティングを実施。
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記事の概要
今回の記事はこんな人のために書いています

  • 製薬・ヘルスケア業界で次世代の営業マーケティングモデル構築に悩むマーケティング責任者
  • 製薬・ヘルスケア業界の現場で試行錯誤を繰り返すMR

今回の記事を読むと以下のことが分かります

  • 製薬・ヘルスケア業界で求められる次世代営業マーケティングモデルの要件
  • 製薬・ヘルスケア業界における先進事例

こんにちは、スターコネクトコンサルティングの水本です。

今回の記事は、製薬業界向けの営業マーケティングの業界専門誌のMonthlyミクスで2020年12月号に掲載した、製薬・ヘルスケア業界における次世代営業・マーケティングモデルの先進事例について記載した内容をご紹介したいと思います。

Monthlyミクス12月号でも公開していますので是非、ご興味ある方はご覧ください!

それでは以下にご紹介します!

はじめに

前回の連載第1回ではCOVID-19を契機に製薬・ヘルスケア業界の営業/マーケティング領域で注目を浴びている「次世代営業マーケティングモデル」について、他業界の事例として、“完全オンライン”で製品導入までを実現するハブスポットの営業・マーケティングモデルについて見てきました。

しかし読者の皆様の中には「他業界だから成立したのではないか?」と疑問に思われる方も多いと思います。

そこで第二回となる今回は、「本営業マーケティングモデルは製薬業界でも適用可能か?」という点について、医療・ヘルスケア領域の先進事例として、私が支援した、ヘルスケアスタートアップの営業マーケティングモデルの事例を紹介し、本モデルを製薬業界で適用するうえでの論点について考えていきたいと思います。

営業・マーケティング領域でもデジタルによる革新を起こす

今回は具体例としてとあるヘルスケアスタートアップの事例を取り上げたいと思います。

同社は、治療用アプリを取り扱うヘルスケアスタートアップであり、製品自体の革新性のみならず、営業・マーケティングの分野でもデジタルによる革新を起こすことを目指しています。

同社と出会った2018年当時、「非効率(エンドユーザーまで多くのステークホルダーが関与)かつアナログ(人海戦術中心)」な営業・マーケティング分野で「シンプルかつ高効率な新しいモデルを構築し、営業・マーケティング領域でもデジタルによる革新を起こす」というCOOのビジョンを聞き、「実際に医療業界でやろうとしている企業が本当にあるのか」と衝撃を受けたのを今でも鮮明に覚えています。

というのも著者自身がMRとして現場で問題意識を感じ、同様の営業モデルを何度か製薬会社の方と議論する事もありましたが、当時は「総論賛成各論反対」状態だったからです。当時からデジタル化は叫ばれていましたが、実際には多くのステークホルダーが関与し、かつ対面営業が中心の業界において、各社従来の営業から大きく体制をかえるまでには至っていませんでした。

同社が実現しようとする「シンプルかつ高効率な新しい営業・マーケティングモデル」は、流通構造をシンプルにすることに加え、少数精鋭の高効率な営業・マーケティング体制を取ることにより、医療経済性が高い製品の流通・提供を可能にしています。特に「少数精鋭の高効率な営業・マーケティング体制」を実現する為に、徹底的にデジタルを活用し、「完全オンラインの営業・マーケティング体制」による新製品上市を予定していることは注目に値します。

ただ一方で私自身、「少数精鋭の完全オンライン営業・マーケティング体制」の構想自体には、賛成だでしたが、コロナ以前の2018年当時では、新薬を完全オンラインで売り切るモデルは時期尚早であるとの意識も抜け切れていませんでした。5年、10年のスパンでは業界の先進モデルとして考えられる様になるかもしれませんが、顧客である医療従事者がオンライン面談を含めたデジタルツール活用に心理的なハードルを抱えた状態では、一般化するのは難しいのではないかと感じていました。

しかし、そんな課題感も理解したうえで、「ではどの制約条件をクリアすれば実現できるのか?」という意識で実行に落とし込んでいく姿は、圧巻でした。

では、ここで具体的に「完全オンライン営業・マーケティング体制」とはどの様なものかについて見ていきたいと思います。

「高い専門性」と「高効率・少数精鋭」の次世代・営業マーケティングモデルを構築

第一回で他業界の先進事例としてハブスポットの事例を共有しましたが、ソフトウェア業界で近年一般化され始めた「The Model」という営業プロセスをベースに、製薬業界で求められるプロセスとして再構築しています。ここでは、詳細な業務プロセスの話はしませんが、本プロセスのキーワードである1.「高い専門性」と2.「高効率・少数精鋭」について見ていきたいと思います。

カスタマーサクセスの新設により、高い専門性を発揮

第一に、「高い専門性」ですが、本モデルは従来、1人のMRが行っていた業務を「インサイドセールス」、「セールス」、「カスタマーサクセス」の3つに分けることにより実現しています。これまでのMRは、自身の担当するエリアに対して、営業目標を持ち、アポ取得~製品説明~製品導入~フォローまでを全て1人の担当者が行っていました。

しかし、短期に売上をあげるハンター型のMRと、コツコツと医師の元に役立つ情報を提供し、一見地味だが長期的な信頼関係を元に、売上を右肩上がりに挙げるMRに求められる資質はそもそも違うと思います。私はMR時代どちらかというと地味で、クロージングが得意だったかというとそうではない方の部類の人間でしたが、当時から医師の専門分野に関する、最新情報の勉強・準備を行ったうえで面談を行うことには拘っていました。ただ一方で、クロージングが得意で短期に売上を向上するのが得意なMRを見ると「自分は向いていないのかな…」と思ったことも多々ありました。

著者自身の体験をベースに考えても、売上を効率的に挙げることがミッションとなる「セールス」と、医療従事者と長期に渡る信頼関係を構築する「カスタマーサクセス」部分で分けて考えるのは理にかなっていると思います。「カスタマーサクセス」が「売上」を全く考慮しないというわけではありませんが、目標を「長期にわたる関係構築、ブランド価値最大化」と置くのであれば、そのために必要な活動も異なってくると思います。

今後、デジタルデバイスの普及により今までアクセス出来なかった、患者データの収集が進むにつれ、製薬会社のMRには、単なる自社製品の普及という「モノ売り」の発想から、モノを含めた「ソリューション提供」という概念が一般的になると思います。その際、このカスタマーサクセスの担当者が、1人の患者さんの病気をどの様に自社製品を通じて解決していくかを考え、また、場合によっては自社製品以外の選択肢も含めて医師と高いレベルで議論することが求められる世界がすぐそこに迫っています。

少数精鋭で営業・マーケティングを「完全オンライン」により実現

次に「高効率・少数精鋭」ですが、同社は「完全オンライン」で「アポ取得~製品説明~製品導入~フォロー」を行うため、競合と比較しても少数精鋭の営業体制を構築しています。

冒頭でも述べましたが、営業・マーケティング組織立ち上げ時は、まだコロナ前で対面営業が中心の時期でした。その中で製薬会社を経験する身としては、どうしても「オンライン主体」であっても「一定数は対面営業」が重要との考えが心の底にはありました。ただ、当時から医師にヒアリングを行っていると「必ずしも対面でなくても、ポイントさえ押さえればオンラインでも可能なのではないか?」と考えるようになりました。

例えば完全オンラインで新薬導入を実現する上で一つの論点となるのが「製品導入期」と言われています。「製品導入期」は、一般的に顧客側も製品に対する多くの情報を求めており、この時期に如何にして丁寧な情報提供を行い、自社製品の有用性・使いやすさを理解してもらうことがその後の処方増につながるといわれています。この点は対面での情報提供でも同様の感覚をお持ちの方は多いのではないでしょうか。「製品導入期間(3~6ヵ月)」とその間で「実施するべき事項」を明確に定義・管理し、通常よりも丁寧にフォローを行っていくことが重要となります。

上記はほんの一例ですが、オンライン面談に対する顧客の心理的なハードルが下がったコロナ後の現在において、完全オンライン営業は、今後益々増えていくのではないかと推察します。

次世代営業マーケティングモデル
「5+1成功の要諦」とは?

これまで、他業界の事例、医療ヘルスケア領域における次世代営業・マーケティングモデルについて考えてきました。簡単に振り返ると、次世代の営業・マーケティングモデルは、従来営業が一人で行っていたプロセスを「インサイドセールス」「セールス」「カスタマーサクセス」で分業することにより、各プロセスにおける専門性を最大化したうえで、「完全オンライン」で対応することにより、効率化も同時に実現する仕組みでした。

このプロセスを現在の製薬会社のプロセスに置き変えて考えると、次世代営業マーケティングモデル立上げに際し、大きく以下5つについて考える必要があります。

1.    インバウンドマーケティング組織への進化
2.    eMR部隊の立上げ
3.    セールスプロセスの再構築
4.    カスタマーサクセス組織の立上げ
5.    部門間協業プロセスを支えるインフラ整備(MA/SFA/CRM)

また、上記5つは次世代営業マーケティングモデルにおける、「ハコ作り」という部分が大きいですが、一番重要なのはやはり「ヒト」つまり、「MR」であり、最後の一つとして、「次世代MRの定義・育成」を定義したいと思います。「5+1成功の要諦」として、「+1」にしたのは最後の「次世代MRの定義・育成」が最も重要であるという著者の思いからでもあります。

第一回、第二回を通じ、多くの皆様が疑問に思っていた「完全オンラインで採用まで実現できるのであろうか?」「他業界だから成立したのではないか?」といった疑問にお答えすることが出来たでしょうか?

勿論、各社の現状の課題、将来の目標が異なる中、一律なモデルをあてはめることは難しいでしょう。この点についてもどこかの機会で考え方を提示したいと思います。

次回は、この「5+1成功の要諦」のうちMRに最も関わる部分である「eMR部隊の立上げ」「セールスプロセスの再構築」「カスタマーサクセス組織の立上げ」という観点から、製薬業界における次世代営業・マーケモデルを考えていきたいと思います。

⇒第三回:「”5+1成功の要諦”を踏まえて」を読む

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国内外の製薬会社においてMR業務に従事。2012年には国内5%表彰にあたるJapan Salse Excellence Awardを受賞。その後、外資系コンサルティング会社にて、製薬企業の営業・マーケティング、PV、PMS部門の戦略策定から組織・人変革、BPRまで幅広い業務に従事。 現在は、独立しヘルスケアスタートアップ、製薬会社の営業・マーケティング、新規事業開発を中心に、コンサルティングを実施。
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