記事の概要

今回の記事はこんな人のために書いています

  • デジタルヘルスが営業・マーケティングに与える影響を理解し、戦略立案に役立てたいと考える営業・マーケティング責任者
  • デジタルトランスフォーメーションを推進することになったが、何をすればよいか分からない営業・マーケティング担当者
  • 次世代MRに求められる役割・業務を理解し、成長したいと考える現場MR

今回の記事を読むと以下のことが分かります

  • 変化に影響を与えるテクノロジーは?
  • そのテクノロジーが営業・マーケティングに与える影響は?
  • 結果、次世代の営業・マーケティング担当者に求められる役割・能力は何か?

こんにちは、スターコネクトコンサルティングの水本です。

今回の記事は、製薬業界向けの営業マーケティングの業界専門誌のMonthlyミクス2021年11月号に掲載した、「次世代MRに求められる役割・能力とは?」について記載した内容をご紹介したいと思います。

Monthlyミクス11月号でも公開していますので是非、ご興味ある方はご覧ください!

それでは以下にご紹介します!

はじめに

2021年4月よりスタートさせた本連載も今回が最終回となります。今回は、本連載の最終回とし、今までの内容を振り返りつつ、「次世代の営業・マーケティング担当者に求められる役割・能力とは何か?」について考えていきたいと思います。

半年間を終えて

スタートアップの事業責任者として働く佐藤との偶然の再開から、約半年に渡って行ってきた議論も、終わりを迎えようとしていた。

「今日は、最後の打ち合わせになるね。最初は、デジタルヘルスという未知な領域にも戸惑うことも多かったと思うけど、回を重ねるごとに自分の頭で考えながら、前に進む様子をみて心強く思っていたよ」

「有難う。俺も佐藤と再開した時は、経験がない領域について、自分が考えられるか不安な面もあったけど、こうやって議論しながら、自分なりの答えを見つけられているような気もして、今は取り組んで本当に良かったと思っているよ」

「それは良かった。今回は最後の打ち合わせになるから、今まで2人で議論してきた内容を振り返りつつ、現場のMRとしてどの様な点に意識しながら活動をしていくべきか議論しようか」

「因みに、田中との打ち合わせの1回目で話した、3つの質問って覚えている?」

「3つの質問??ごめん。もう一度教えてくれるかな」

「議論を始める時に、①『変化に影響を与えるテクノロジーは?』、②『そのテクノロジーが営業・マーケティングに与える影響は?』、③『結果、次世代の営業・マーケティング担当者に求められる役割・能力は何か?』について、明らかにしていこうと話したと思うんだ」

「今回は、この3つの質問に対する答えを、2人で纏めていく形で振り返っていこう」

変化に影響をあたえるテクノロジーとは?
営業・マーケティングに与える影響は?

「まず一つ目、①『変化に影響を与えるテクノロジーは何か?』②『営業・マーケティングに与える影響は?』について、考えていきたいな。今までの議論の中で、話してきたテクノロジーについて振り返えってみよう」

「そうだね。ちょっと待ってね」

そういうと、今まで2人でホワイトボードに書き込んできたポンチ絵の写真を取り出す田中MRであった。

「こちらのスライドを見てほしい。今まで2人で『ウェアラブルデバイス』、『オンライン診療』、『治療用アプリ』について、考えてきたと思う。この3つのテクノロジーに共通する事として、今まで入手する事の出来なかった、『患者データの入手が可能になる』点が上げられる」

「具体的に営業・マーケティングの現場にどの様な影響を与えるんだっけ?」

「そうだね。今までの情報提供では、処方された結果、効果がどうなっているか、副作用はコントロール出来ているのか、等については、製薬会社が知る術はなく、医師からのヒアリングベースで、情報提供を行っていたと思う。しかし、これらの入手データを元に、診療上の課題を特定したうえで、情報提供をすることが出来れば、精度は格段に上がるよね。」

「また入手データを元に、費用対効果も試算することが可能になるね。この結果を診療報酬に反映させるなどは今後起きてくる流れかもしれないね」

「有難う。その通りだね。その他は付け加えることはあるかな?」

「これらテクノロジーを『単体』で考えるのではなく、『掛け合わせ』で考えることの重要性も見てきたと思う。例えば、『オンライン診療×治療用アプリ』、『ウェアラブルデバイス×オンライン診療』を例に取って振り返ってみよう」

「まずは、『オンライン診療×治療用アプリ』から。正確には「オンライン診療×治療用アプリ」の事例ではないけど、類似事例としてオンライン診療のTeladocと、糖尿病疾患プログラムを提供するLivongoの例を見てきたよね。これら2社が合併することにより、「診療~在宅」までの全てのプロセスで患者さんと接点を持ち、モニタリングを行い、必要に応じて介入が出来るようになる。また、営業・マーケティング視点としては、予防~診断~治療~管理・リハまでのPatient Journey横断的なマーケティングが可能になるという点は非常に期待されるところだよね。今まで介入できなかった、『在宅』にいる患者に対しても、異常値が計測されたら必要に応じて、コーチングやオンライン診療に誘導することもできるし、精度の高い活動が可能になるね。」

「また次に『ウェアラブルデバイス×オンライン診療』について。今まで基本的には『医療』と『ヘルスケア』は断絶していた。昔から医療とヘルスケアの境界がなくなるなどというのは言われてきたんだけど、実際には『予防』段階をビジネス化するのは難しいと言われてきた。」

「しかし、『GAFAの動向』のパートで見てきたように、圧倒的な顧客接点を有するGoogle、Apple、Amazonの様な企業が、ウェアラブルデバイスを通じて患者データを入手し、それを元に早期の受診勧奨を行う流れについても見てきた。

「これはApple Heart Studyの実施フローだけど、Apple Watchで計測した心拍数のデータを元に、心房細動の兆候を拾い、オンライン診療で施設へ誘導する流れを見てきたと思う。」

「営業・マーケティングに与える影響としては、これらによって『ヘルスケア』と『医療』の垣根がなくなり、今後は医療業界のみならず、業界を超えた様々なステークホルダーとの連携が必要になることも一緒に考えてきたよね。」

「そうだね。今までの議論を纏めてくれて有難う。これらのテクノロジーだけでも今後医療業界は大きく変貌しそうだね。

「では、これらを踏まえ③『次世代の営業・マーケティング担当者に求められる役割・能力は何か?』について、田中の考えを聞かせてくれるかな?」

次世代MRに求められる役割・能力とは?

「正直自分としても、本当の所どうなるかは分からない部分が多いので、あくまで一意見として聞いて欲しい」

「勿論。未来を詳細に予想するのは難しいし、答えを出すことが目的ではないから、あくまで自分なりの考えという観点で聞かせてもらうよ」

「こちらを見てほしい。今まで、「オンライン診療」、「治療用アプリ」、「ウェアラブルデバイス」といったテクノロジーによって、

●今まで入手できなかった患者患者データの入手が可能になる
●プログラムの費用対効果が明らかになる
●ヘルスケア~医療の垣根がなくなる

といったことを見てきたと思う。」

「まず、『今まで入手できなかった患者データの入手が可能になる』事により、製薬会社側で医師や患者、地域が抱える課題を明確に把握することが可能になる。この変化により“先生が認識していない課題”についても先回りして提案することが出来るようになる。正に『患者・医師・地域の成功に導く伴走者』として無くてはならない存在になると思うよ」

「また『プログラムの費用対効果が明らかになる』点だけど、従来、営業としては、先生に処方頂く(=売上増加)ことが成功と定義していたと思うけど、処方頂くだけではなく、しっかりと結果(=効果がでる)を出すことは今まで以上に求められるようになる。また、治療用アプリなどのデジタルプロダクトは、しっかりと患者・医師に活用されることが効果につながる為、その点でも『治療プログラムを進化させる』という役割が営業に求められるかもしれないね」

「なるほど、面白いね。では、最後の『ヘルスケア~医療の垣根がなくなる』という点について田中の考えを聞かせてくれるかな」

「『医療従事者のみならず業界を超えたコーディネーター』としての役割が求められるようになるんじゃないかなと思う。今までは、担当の医師や医療従事者とコミュニケーションを取れば良かった。また、基本的には対面文化が強い業界だったから、対象とするエリアも自身が担当する病院の範囲に留まっていたと思う。しかし、今後は医療とヘルスケアの垣根はなくなるし、地理的な要因もオンラインMTGが一般的になれば関係なくなる。今後は、自身の担当エリア、医療従事者だけを対象にしていてはダメだと思うんだよね。『業界・エリアを超えたコミュニティ形成』が求められるようになるのかもしれない。」

「『業界・エリアを超えたコミュニティ形成』か。元々MRはコミュニケーション力、コーディネート力は強みだし、その強みを拡張する方向での進化が出来ると良いよね」

「本当にその通りだと思う。これまでの話し合いを通じて、次世代のMRに必要なのは『課題設定型問題解決力』、『ファシリテーション力』、『コミュニティ形成力』の3つを強化すべきじゃないかなと思うんだ。デジタルプロダクトが普及することにより、患者・医師データを元に、1.『顧客が気づいていない課題を発見し、医師・患者に提案・伴走』する。伴走する中で得た、2.『患者・医師の声をプロダクトに反映すべく、社内関連部署とも連携し、治療プログラムを進化』させる。また、医療従事者は勿論の事、3.『課題解決に必要なプレーヤーを巻き込みながら、コミュニティを形成』する。どこまで出来るか分からないけど、こんな未来が実現できるなら、個人的にはワクワクするなと思う」

「本当にそうだよね。今現場では、大きな変化のタイミングを迎えている。従来出来たことが出来なくなってしまったり、本当に大変な時期だと思う。でも、そんな変化の中、試行錯誤を繰り返しながら、社外の勉強会に参加したりするなど、現場でも新しいスキル・知識を獲得しようと積極的な流れが出てきているのも事実だよね。今回でこのテーマは終わりになるけど、また機会があったら是非話そうね。後、機会があったらスタートアップでPJTベースで一緒に何か出来ると良いな」

「了解!また何か機会があったら声かけてね。」

おわりに

今回は、「デジタルヘルスの衝撃」の最終回として、今までの内容を振り返りつつ、「次世代のMRに求められる役割・能力」について考えてきました。現時点では少し、突飛な部分もあったかもしれませんし、規制面などは一旦考慮せずに、仮説ベースで考えたものとして考えて頂きたいです。

今回の連載はこれで一旦終了となりますが、今後も本テーマについて皆様と議論を続けていきたいと考えています。本連載では、最後までお付き合い頂き有難うございました。

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