記事の概要

今回の記事はこんな人のために書いています

  • アフターコロナのハイブリッド営業・マーケティングモデルの構築を検討中の営業・マーケティング責任者
  • インサイドセールスMR立ち上げを推進することになったが、何をどうすれば良いか分からない営業・マーケティング責任者
  • 次世代に求められるインサイドセールスMRの役割・業務を理解し、成長したいと考える現場MR

今回の記事を読むと以下のことが分かります

  • 次世代営業マーケティングモデルとは何か?
  • インサイドセールスの役割・責任は?
  • 有望医師の管理・育成は?
  • 有効な面談の連携方法は?

こんにちは、スターコネクトコンサルティングの水本です。

今回の記事は、製薬業界向けの営業マーケティングの業界専門誌のMonthlyミクス2022年9月号に掲載した、「業務編(インサイドセールス):どの様に有望医師を、管理・育成・連携するか?」について記載した内容をご紹介したいと思います。

Monthlyミクス9月号でも公開していますので是非、ご興味ある方はご覧ください!

それでは以下にご紹介します!

はじめに

前回の連載では、「業務編(マーケティング):どの様に有望医師を獲得・育成するのか?」として、マーケティングの役割である「有望医師の獲得・育成方法」について1.「どの様な医師をインサイドセールスが対応(≒MQLとする)するのか?」2.「どの様な医師をセールスへ連携するのか?」3.「参加医師へのフォローアップはどうするのか?」という、3点について、Web講演会後のフォローを例に考えてきた。第6回目となる今回は、業務編の続きとして、「インサイドセールス」について、インサイドセールスの役割/業務に落とし込む際のポイントについて、「有望医師の管理・育成方法は?」、「有効な面談の連携方法は?」という点から考えていきたいと思う。

インサイドセールスの役割・責任は?

ここでは改めて、インサイドセールスMRの役割について振り返ってみよう。

従来のプロセスでは、MRが1.「認知拡大」~2.「有望医師獲得・育成」~3.「採用」~4.「フォロー・処方増」の全ての段階を担ってきたと思うが、今まで考えてきた営業マーケティングモデルでは、従来のプロセスを「マーケティング」「インサイドセールス」「MR」で役割分担するモデルを考えてきた。

中でも今回スポットをあてる「インサイドセールス」は、「マーケティング」、「MR」の橋渡し役として機能しながら、1.「有望医師の管理・育成」、2.「有効な面談の連携」を行うことと定義した。(図2

図3にインサイドセールス、セールスの業務の流れについて記載した。インサイドセールスは、マーケティングが各種施策により、有望とされた医師について、セールスに連携する前に一度、「架電、Web面談」等を通じて、「自社製品で解決可能な診療上の課題を抱えているか?」、「当該製品の採用に権限を有する医師か?」、「当該製品の採用を検討しているタイミングか?」などといった、一般的にC(Challenge:課題)、A(Authority:権限)、T(Timeline:期限)と言われる観点などを確認する。そのうえで、本当に「MR側へ引き渡すのが的確なのか?」について評価し、連携すべきタイミングではないと考えた医師については、一定期間、インサイドセールス側で1.「管理・育成」したうえで、2.「連携」する役割を担う。

今回は、インサイドセールスの業務を実際に構築する上で、「有望医師の管理・育成方法は?」、「有効な面談の連携方法は?」という2点について考えていきたいと思う。

有望医師の管理・育成は?

インサイドセールスの業務について、1.「架電前」、2.「架電」、3.「架電後」に分けて見てみたいと思う。

インサイドセールスの1日の業務のスケジュールとしては、病院毎・医師毎に2.「架電」のタイミングは異なると思うが、概ね「午前診療」、「午後診療」の終わりを見計らって行うことが多い。

つまり2.「架電」のタイミングとしては、「11:00~13:00」、「17:00-19:00」を一つのスロットとして、その前後で、1.「架電前」、3.「架電後」の活動を行うことになる。

まず1.「架電前」であるが、ここでは、「MQLリストの確認」、「架電準備」を行う。

図4に示したように、インサイドセールスは、「3rd Party視聴・参加リスト」、「自社Web、講演会リスト」、「学会・展示会リスト」、「各種フォーム」等の各種マーケティング施策から流入・獲得した有望医師の一覧である、「MQLリスト」を起点に活動を開始する。

インサイドセールスは、毎朝この「MQLリスト」を確認し、自身の担当に振り分けられた有望医師は、原則24時間以内に対応する。

また、この「MQLリスト」に表示する項目は、インサイドセールスがこの画面を起点に活動を開始することを考慮し、活動の「優先順位付け」、「ステータス状況の管理」を行う為に必要な項目を設定しておくと、効率的に「架電準備」を行うことが出来る。

「MQLリスト」から選定した医師に対し、2.「架電」を実施し、3.「架電後」の活動として、その結果をMA/SFAに入力する。

一般的に、インサイドセールスは、不特定多数の医師に対して架電、Web面談を行っていく為、対象医師が現在「どの様なアクションを行い」、「どの段階にいるのか」についてもしっかりと管理しておかなければ、活動に抜け漏れが生じてしまう。
また、管理者側としても、各インサイドセールスが、どの程度のリードを保有しており、新規でどの程度のリードをアサイン可能か等を把握する上でも、リード管理は必要になってくる。

図5に3.「架電後」の「リード管理の方法」の一例を上げる。各ステージの定義、移行判定基準に沿って、リードを管理・育成する。

インサイドセールスの通常業務の中では、「New」、「対応中(未接続)」を中心にアプローチを行っていくが、重要なのは「終了(リサイクル)」リードをしっかりと分けて管理しておき、必要に応じて再アプローチをするということを運用の中に組み込んでおくことである。

製品上市直後等は、Web講演会、問合せ等を通じて「MQL(New)」となる有望リードも多数獲得することが出来るが、一定期間、情報提供活動を行うと、徐々に新規で獲得する有望リードの数も頭打ちになってくる。

その時に、貴重なインサイドセールスのリソースを振り分ける先として、以前、一度「MQL(New)」となり、その時点では一旦「リサイクル」とした医師が貴重なアプローチ先となる。

この様なアプローチも、しっかりと医師のステータスを管理しているからこそ出来るのであり、インサイドセールスを立ち上げる際は、しっかりとステータスの管理基準を設定して管理することをお勧めする。

有効な面談の連携方法は?

このようにインサイドセールスが、マーケティングが獲得した有望医師を、「架電、Web面談」等を通じて、「管理・育成」したうえで、MR側に連携しても良いと評価した医師を連携する。

前回の連載でも述べたが、連携する医師の基準については、予め設定した上で運用を開始したほうが良い。ただ単に連携数を優先し、MR側へあらゆる医師を連携してしまうと、現場で確認した時には、あまり興味がなかったという事も多くなり、逆に現場からの不満も増えてしまうので注意が必要だと思う。

「どの様な医師を連携するのが適切なのか?」については、画一した基準はないため、個々の状況に応じて決めるべきであるが、上市間もない製品であれば、まず採用施設数を増やすことがMR活動としての優先順位が高いと思うので、セールスに連携するべきかを、1.「対象患者はいるか」、2.「採用権限はあるか?」、3.「採用予定はあるか?」の観点で、「採用につながる医師か否か」を評価する。(図6

上記はあくまで一例であるが、理想的なのは「インサイドーセールス」と「現場MR」が定期的に連携の場を持ち、現場からのフィードバックを元に日々改善していくことである。

筆者は比較的小規模の少数精鋭での組織立上げの中での経験ではあるが、やはり運用の中で気づくことの方が多い為、運用しながら最適解を見つけていく事が重要だと思う。大規模組織では、運用を行う中で、最適解を見つけるという事は、中々難しい事かもしれないが、エリアを限定して開始する等、小さく始めて最適解を見つけてから全体に展開する等の工夫は出来るのではないかと思う。

おわりに

今回は、インサイドセールスの役割/業務に落とし込む際のポイントについて、「有望医師の管理・育成方法は?」、「有効な面談の連携方法は?」という点から考えてきた。

近年、製薬業界でもWeb面談自体は一般的になり、eMRを活用する企業も増えてきたと思う。一方で、単なるアポインターとなっている場合や、継続的な面談、現場MRとの連携等課題はまだまだ多いのも事実だと思う。

一方で、デジタルのメリットの一つであるエリア、時間的制約がないなどのeMR特有のメリットも多いのは事実である。

今後1MR当たりの対象エリアの拡大が見込まれる中、MRが即座に訪問できない医師/施設は増えることを考えると、eMRと連携を強化し、eMRがデジタルを上手く活用し、「有望医師/面談を察知」、「評価」したうえで、現場MRに連携するモデルというのは、少数精鋭で組織を構築していく上では欠かせない視点になってくると思う。

またMR側にとっても、専門性を高め、希少性の高いスキルを保有すれば、場所・時間に捕らわれない働き方を実現できると言う意味でも「eMR」という職種は魅力的な働き方になってくると個人的には考えている。事実、Saas業界ではインサイドセールスの重要性は増しているし、キャリアとしての魅力も高くなっている。製薬業界でも近い将来そうなることは自然な流れではないかと思う。

第七回:「eとリアルの使い分けは?」を読む

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