記事の概要

今回の記事はこんな人のために書いています

  • アフターコロナのハイブリッド営業・マーケティングモデルの構築を検討中の営業・マーケティング責任者
  • インサイドセールスMR立ち上げを推進することになったが、何をどうすれば良いか分からない営業・マーケティング責任者
  • 次世代に求められるインサイドセールスMRの役割・業務を理解し、成長したいと考える現場MR

今回の記事を読むと以下のことが分かります

  • 次世代営業マーケティングモデルとは何か?
  • マーケティングの役割・責任は?
  • どの様に有望医師を獲得・育成するか?
  • どの様な医師をインサイドセールスが対応するか?
  • どの様な医師をセールスへ連携するか?
  • 参加医師へのフォローアップはどうするか?

こんにちは、スターコネクトコンサルティングの水本です。

今回の記事は、製薬業界向けの営業マーケティングの業界専門誌のMonthlyミクス2022年8月号に掲載した、「業務編(マーケティング):どの様に有望医師を獲得・育成するか?」について記載した内容をご紹介したいと思います。

Monthlyミクス8月号でも公開していますので是非、ご興味ある方はご覧ください!

それでは以下にご紹介します!

はじめに

ここまでの連載を通じ、「アフターコロナに求められるハイブリッド型の営業・マーケティングモデルとは?」という問いについて、戦略編、組織編で、営業マーケティングモデルの「考え方」について考えてきた。前回の連載では、「組織編:自社の状況に即したハイブリッド型モデルとは?」という問いについて、戦略編で考えた「マーケティング戦略の全体像」を出発点に、「マーケティング、インサイドセールス、MR」の「役割分担モデル」について検討してきた。第5回となる今回は、前回定義した「役割分担モデル」を元に、実際に各役割が担う業務について、実際の運用例を見ながら一緒に考えていきたいと思う。

マーケティングの役割・責任は?

前回の「組織編」では、従来の営業プロセスを「マーケティング」「インサイドセールス」「セールス」「カスタマーサクセス」で協業する営業マーケティングモデルについて考えてきた。

従来のMRは、1.「認知拡大」はマーケティングと共に担いながら、2.「有望医師獲得・育成」~3.「採用」~4.「フォロー・処方増」の全ての段階を担ってきたと思うが、前回考えたモデルでは、1.「認知拡大」~2.「有望医師獲得・育成」は「マーケティング」「インサイドセールス」に任せ、「MR」は3.「採用」~4.「フォロー・処方増」が主な役割として定義した。

今回の業務プロセス編では、「有望医師の獲得・育成」を目的とする、「マーケティング」について、「どの様に有望医師を獲得・育成するのか?」という点について、Web講演会を起点としたシナリオを例に考えていきたいと思う。

どの様に有望医師を獲得・育成するか?

戦略編では「プロモーション戦略の全体像」を元に、各施策毎に目標とする「リード数」「面談数」「採用数」を設定した。

マーケティングが行う1.「認知拡大」~2.「有望医師獲得・育成」としては、「3rd Party施策(e-Detail、リンク遷移、Web講演会)」、「自社Web講演会」、「インサイドセールス施策」、「学会」などオンライン、オフラインで顧客と接点を獲得し、それらを起点として各施策毎にリード獲得シナリオを作成し、活動を行っていく。

それらの施策の中でも、Web講演会は、コロナ禍において、各社積極的に実施し、アンケート結果や視聴結果を元に、MRへ連携し、訪問機会を創出するという取り組みを行っていると思うが、ここではWeb講演会のフォローについて、「マーケティング」「インサイドセールス」「MR」が各自の役割を元に、どの様な連携が出来るのか?について改めてシナリオを設定し、考えていきたいと思う。

図3に自社で実施したWeb講演会施策の「シナリオ」について記載した。自社で実施した講演会の為、既に各医師のメールアドレスは取得済みであることを前提にシナリオを検討したいと思う。

既に多くの製薬会社でも、Web講演会時のアンケートや視聴結果を元に、「興味あり」や「情報提供希望」医師のMR連携は行っていると思うが、一方で一律に連携することにより、確度に問題があったりするなどして、有効に連携できていないなどの例も多いのではないだろうか。また、連携と言っても単にリストを共有するだけで、その後のフォロー/検証は行っていないケースも多いのが現状ではないだろうか。

実際の運用の中で、確度が高くない医師の連携が続くと、現場MRの方でフォローされなくなってしまうなどの課題も出てくるため、「如何にして確度の高い医師を選定して、現場MRへ連携していくのか?」という点について考えていくことは重要である。

ここでは、Web講演会後のフォローについて「マーケティング」、「インサイドセールス」「MR」がどの様に役割分担を行いながら、「如何にして確度の高い医師を選定して、現場MRへ連携していくのか?」について、考えてみたいと思う。

どの様な医師をインサイドセールスが対応(≒MQLとする)するのか?

まず一点目の「どの様な医師をインサイドセールスが対応(≒MQLとする)するか?」についであるが、これは既に「アンケート結果」等を元に「興味あり」「情報提供希望」などの項目にチェックを付けた医師を、MQL(Marketing Qualified Lead)として対応している事が多いと思う。

または、もう少し精緻に定量的に管理する場合は、マーケティングオートメーションのスコアリング機能を活用し、「属性(TG病院、診療科、KOL、TG医師…)」、「行動(製品サイト閲覧、メールクリック/開封、1週間に〇回以上閲覧…)」、「キーアクション(問合せ、訪問依頼、論文DL等)」を点数化して一定以上の点数になった場合は、MQLとしてインサイドセールスへパスする等の運用を取っているケースもあるかと思う。

著者も立ち上げを行う中で、MAの設定を行う際に、MQL基準について考えてきたが、過去のデータが十分でない段階では、中々精度の高い基準をマーケティングオートメーションに設定することが難しかったため、「講演会に2回以上参加」、「情報提供希望有」等といった分かり易い指標をMQLとして設定し、立上げ当初はインサイドセールスから、幅広くあたりながら、フィードバックを得る中で、「どの様な医師をMQLとするのが良いか?」について一緒になって考えていくアプローチが一番良いのではないかと考えている。

どの様な医師をセールスへ連携するのか?

次に「どの様な医師をセールスへ連携するのか?」についてだが、ここは可能であれば営業側と事前にすり合わせを行い、基準を明らかにしたうえで連携するのが良いと思う。

基準を明らかにしないまま、とにかくアポイント数を目標にMR側に連携すると、どうしても確度が低い面談を連携する事が多くなってしまい、MR側からの不満も出てきてしまう。またそれが続くと、連携してもフォローされないリードが増えていくという悪循環にも陥ってしまう。

あくまでインサイドセールスの目標は「“有効な”面談」をMRへ連携することとし、単なるアポインターにならない事が重要である。

この「“有効な”面談」についても最初は定義することは難しいと思うが、例えば連携時にインサイドセールス側でヒアリングする項目を設定しておき、その中で「○項目以上確認でき、採用につながる面談である可能性が高い面談」のみMR側へ連携する等の基準を設定しておくと良いと思う。

またこれら基準も固定的なものではなく、設定した後も、MR側から定期的にフィードバックを貰いながら、常にアップデートしていく運用が重要である。フィードバックを貰う中で現場の課題、ニーズも見えてくるうえに、一番重要であるコミュニケーションを行うことができる。連携時の課題というのは、何か明確な基準を設定すれば解決するものではなく、日頃からのコミュニケーションが一番重要であると思う。

参加医師へのフォローアップはどうするか?

最後に参加医師へのフォローアップであるが、こちらは主にマーケティングサイドでナーチャリングメールを送付し、その反応を見ながら、MQLになったリードはインサイドセールスが確認のうえ、セールスへパスするというフローを設計することが重要である。

図6はシンプルなワークフロー例であるが、マーケティングオートメーションのシナリオ機能を活用し、マーケティングシナリオを設定し、その反応に応じたコンテンツ送付、MQL設定、インサイドセールスへの振り分けが重要である。

セミナー参加医師を、全てエクセルなどの手作業で管理することは現実的ではない為、マーケティングオートメーションを活用し、マーケティング側でシナリオ設計していく必要がある。ノンコードでフローを設定することができるツールも多いため、ベンダー側に設定を丸投げするのではなく、自社でシナリオ構築・設定することができる人材を育成することも、ツールを活用した機動的なマーケティング施策を行う上では非常に重要である。

著者自身も立上げ時は、マーケティングオートメーションのシナリオ設計、設定を自ら行っていたが、特に導入直後は、運用を行う中で初めて気づくことも多いため、やりながら機動的にシナリオや設定を変更していくことが重要である。

よく言われることだと思うが、精緻に作り込んだシステムを導入したとしても、実際に運用に即した形にアップデートしていくことが重要であり、これを内部で実施できる人材を育成していくことが重要である。

ツールにもよるがノンコードで設定可能なマーケティングオートメーションも最近は多いため、最初は大変だと思うが、外部ベンダーやシステム担当者に丸投げするのではなく、マーケティング担当者が自ら設定を行う事ができるようにしておくと良い。

おわりに

今回は「業務編(マーケティング):どの様に有望医師を獲得・育成するのか?」として、マーケティングの役割である「有望医師の獲得・育成方法」について、Web講演会後のフォローを例に考えてきた。

「Web講演会後のフォロー」以外の施策についても、施策毎に「有望医師の獲得・育成」のシナリオについて検討し、マーケティングオートメーション等のツールも活用しながら、「インサイドセールス」「セールス」とどの様に連携していくのかについて設計しておき、各施策毎の獲得「リード数」「面談数」を評価し、費用対効果まで振り返りを行うことにより、「どの施策が有効なのか?」を評価することも出来る。

次回は、業務編の続きとして、「インサイドセールス」以降のプロセスについて、注意点や検討すべきポイント等を上げながら、一緒に考えていきたいと思う。

第六回:「どの様に有望医師を、管理・育成・連携するか?」を読む

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