記事の概要

今回の記事はこんな人のために書いています

  • アフターコロナのハイブリッド営業・マーケティングモデルの構築を検討中の営業・マーケティング責任者
  • インサイドセールスMR立ち上げを推進することになったが、何をどうすれば良いか分からない営業・マーケティング責任者
  • 次世代に求められるインサイドセールスMRの役割・業務を理解し、成長したいと考える現場MR

今回の記事を読むと以下のことが分かります

  • 次世代営業マーケティングモデルとは何か?
  • カスタマージャーニーマップとは?
  • プロモーションの全体像は?
  • 各施策の効果/スケジュールは?

こんにちは、スターコネクトコンサルティングの水本です。

今回の記事は、製薬業界向けの営業マーケティングの業界専門誌のMonthlyミクス2022年6月号に掲載した、「戦略編:『誰に?』『どの様に?』プロモーションを行うのか明確にする」について記載した内容をご紹介したいと思います。

Monthlyミクス6月号でも公開していますので是非、ご興味ある方はご覧ください!

それでは以下にご紹介します!

はじめに

前回の連載では、「ハイブリッド型の営業マーケティングモデルの作り方は?」の総論編として、「戦略」、「組織・人」、「業務」の観点から全体の考え方の流れについて検討した。「戦略編」では、ペルソナ、カスタマージャーニーを元に、対象顧客の属性・行動プロセスを明確にし、そのうえで必要なプロモーションの全体像について「プロモーション戦略の全体像」として纏めた。また、そのうえで必要な「組織・人」、「業務プロセス」について検討し、特に1.「如何にしてリード医師を獲得・育成するのか?」、またそのリード医師を2.「如何にしてセールスに連携していくのか?」について、考えた。第3回以降は、総論編の内容について、もう少し具体的にステップを踏んで考えていきたいと思う。今回は「戦略編」として1.「カスタマージャーニーとは?」、2.「プロモーション戦略の全体像は?」、3.「各施策の効果/スケジュールは?」という3点について考え、自社製品を「誰に?」「どの様に?」プロモーションを行うのかについて考えていきたいと思う。

カスタマージャーニーマップは?

まず初めにプロモーション戦略を考えるうえで対象顧客について理解を深めるために「カスタマージャーニーマップ」を作成する。
「カスタマージャーニーマップ」とは、薬剤の採用・処方に至るまでの、顧客の行動・思考・感情を時系列に「見える化」したものであるが、作成する際は、まずは自社製品の対象顧客像を定義した、1.「ペルソナ設定・作成」を行ったうえで、「カスタマージャーニーマップを作成」する。

従来のターゲッティングでは、対象顧客を「集団」として属性を特定していたが、ペルソナは、対象顧客を「個人」として詳細な人物像を特定するのが特徴的である。プロモーションコンテンツ等を送付する際は、セグメントに応じてメッセージを配信することが多いと思うが、チームで議論を行う際は、ペルソナを定義し、対象顧客の解像度を上げ、共通認識を醸成することにより、よりパーソナライズで具体的な施策を検討することが出来るようになる。

また、次回以降のテーマとなるが、具体的に営業マーケティング体制を検討する際、どの業務をオンラインもしくは、オフラインにするか等を、議論する際にペルソナの認識が揃っていると、「この先生なら対面での頻回訪問がメインというよりは、普段はデジタルや、インサイドセールスで情報提供を行いながら、興味が高まった時点でピンポイントにセールス連携する方が効率的だよね」等と合意形成しながら前に進めることが出来るようになるというメリットもある。

「ペルソナ設定・作成」であるが、ワークショップ形式でチーム内でブレストを行いながら作成していく。一般的なテンプレート参考にし、製品ごとに必要な項目をカスタマイズして自社の状況に応じたオリジナルのテンプレートを作成すると良い。一例として、項目例を上げるとすると、1.名前、2.基本情報(年齢・性別・役職・居住地・出身大学/医局)、3.病院情報(施設規模、診療科、採用プロセスにおける役割、採用における障害)、4.採用処方意向(治療上の課題・ニーズ、よくある採用・処方動機、好きなメーカー)、5.心理的傾向(性格、興味関心事、課題・悩み事)、6.情報収集傾向(デジタルツール活用度、よく使うサイト、アプリ、メディア)等が上げられる。

また、会社や製品によっては、ペルソナを何通りも作成する事もあるかと思うが、初期の議論の段階では思い切ってペルソナを絞り込んで、議論し、必要に応じて増やしていくという形で進めていくことが良いと思う。

次に、作成したペルソナ像を元に、その対象顧客がどの様に製品に対し、「認知・興味を持ち、情報検索を行い、採用・処方に至るのか?」を「カスタマージャーニーマップ」に纏めていく。

「カスタマージャーニーマップ」を作成する際に、意識するポイントとしては、営業を初めとする顧客に近い、「部署と連携して作成」し、「顧客視点で作成する事を常に意識する」ことだと思う。

組織・人編で詳細は検討するが、本連載で対象としている営業・マーケティングモデルは「マーケティング」「インサイドセールス」「セールス」の連携モデルであり、部署を跨いだ連携が非常に重要になってくる。この点からも「カスタマージャーニーマップ」をマーケティング部署だけで考えるのではなく、なるべく顧客に近い、「インサイドセールス」、「セールス」部署とワークショップ形式などで議論し、共通の認識を醸成しておくことが非常に重要になってくる。

また、「顧客視点で作成する事を常に意識する」であるが、どうしてもカスタマージャーニーマップを作成・議論する中で、会社都合の視点に陥りがちになってしまう。その為、この点を常に意識して議論を進めることが重要である。可能であれば、ペルソナ像に近い、医師や医療従事者をメンバーに入れて、議論することにより、現実に即した議論が出来る。社内に医療従事者がいる場合は、ヒアリングだけでなく、実際のワークショップに参加してもらい、一緒に議論を進めると「顧客視点」を担保し易くなると思う。

ここまでで、「ペルソナ」、「カスタマージャーニーマップ」を作成し、「対象医師が、複数のチャネルやタッチポイントの中で、どの様に行動して、採用/処方に至るのか?またその過程でどんな気持ちになるのか?」を可視化することが出来たと思う。

オンラインセールスモデルは、親和性の高い医師・低い医師が存在する為、万人に刺さらないことも多い為、この「ペルソナ」と「カスタマージャーニー」の認識が事前にすり合っていないと、後段の、「プロモーション戦略」、「組織体制」、「業務プロセス」を検討する上で、議論メンバー間でのズレが生じる為、立上げ初期の段階でこのプロセスはPJメンバーで必ず実施し、合意形成を得ておくことが良いと思う。

プロモーションの全体像は?

ここまで作成した「ペルソナ」「カスタマージャーニー」で明らかになった、対象顧客の行動プロセスを元に、目標達成に必要な施策を、「プロモーション施策の全体像」として纏めていく。

図2は簡易的に表現したものであるが、ペルソナ、カスタマージャーニーによって明らかになった導線設計に沿って、対象顧客の行動プロセスの、どの段階に、どの施策を実行していくのか?、また、施策間の関係性も意識して議論することが出来る為、ワークショップ形式で、ホワイトボードなどに絵を描きながら、議論すると、全体感を担保しつつ、チームメンバーの合意形成も測ることが出来る為おススメである。

各施策の効果/スケジュールは?

ここまでで、「誰に?」「どの様に?」プロモーションを行うのかについて、一旦整理することが出来たと思うが、次に「目標達成」のためには「どの施策を?」「どの程度?」実施し、効果は「どの程度見込めるのか?」についても、「施策別シュミレーション」として纏める。

「初年度の目標採用施設数」を元に、目標達成の為に必要な「商談数」、「リード数」にブレークダウンした例を図3に示した。「採用率」、「商談率」は、製品特性を勘案して、前提値として、一旦仮置きで考えると良い。実際は、採用施設数に加え、「目標売上高」を元にブレークダウンする事になると思うが、ここでは簡易的に「目標施設数」を例に考えてみたい。

例えば、初年度の「目標採用施設数」を1000施設と置いた場合、「採用率」、「商談率」をそれぞれ、「30%」、「10%」と仮置きした場合、目標達成に必要な、「商談数」、「リード数」はそれぞれ、「285件/月」、「2850件/月」となる。

「採用率」「商談率」等の前提値は、製品特性によっても大きく異なってくるため、新規事業開発や新製品発売前の試算の段階では分からない事も多いと思うが、大事なのは一定の前提/ロジックを置いた上で、前に進め、実行する中でPDCAを回し適宜修正することだと思うので、あまり精緻さに拘りすぎず数値を設定して欲しい。

では、この月当たりの「商談数」、「リード数」を獲得するには、「どの施策を?」「どの程度?」実施すれば良いのだろうか?

図3で、目標施設数をブレークダウンしたように、「施策毎」に前提値を設定して、各施策で獲得可能な「リード数」、「商談数」、「採用数」を試算する(図4参照)

「自社Web講演会」を例に挙げると、「1,000人」の医師に対して、「1回」配信した場合、「視聴率」、「メアド獲得率」、「商談率」、「採用率」をそれぞれ、「10%」、「100%(登録フォームで獲得)」、「10%」、「30%」とおくのであれば、採用数は「3件」が見込まれるから、目標達成のためには、何回やれば良いか?など施策毎に想定積み上げを行うことができる。

最後に、施策毎に想定「リード数」「商談数」「採用数」「CPA(Cost Per Acquisition)」を試算し、積み上げ結果を整理し、各施策を「どの時期に、何回やるのか?」スケジュールに落とし込んでいく。(図5参照)

おわりに

ここまで、「誰に?どの様に?プロモーションを行っていくのか?」について、「ペルソナ/カスタマージャーニー」、「プロモーション戦略の全体像」、「施策別シュミレーション」を作成し考えてきた。

実際は、これ以外にも詳細に調査などを行い、検討すべきポイントも多くあると思うが、新規事業開発や組織立ち上げの際、最初の議論の出発点として、まずクイックに最低限チーム内で検討し、合意形成していく内容として過去に使ってきた考え方をご紹介させていただいた。

次回以降は、「組織・人編」として、今回作成した「プロモーション戦略の全体像」を出発点として、プロモーション戦略における「営業/マーケティング組織」の位置付けを意識しながら、実際にどの様に組織設計、役割分担等を行いながら、「営業マーケティングモデル初期仮説」として纏めていくかについて考えていきたいと思う。

第四回:「組織編 自社の状況に即したハイブリッド型モデルとは?」を読む

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