今回の記事はこんな人のために書いています
- アフターコロナのハイブリッド営業・マーケティングモデルの構築を検討中の営業・マーケティング責任者
- インサイドセールスMR立ち上げを推進することになったが、何をどうすれば良いか分からない営業・マーケティング責任者
- 次世代に求められるインサイドセールスMRの役割・業務を理解し、成長したいと考える現場MR
今回の記事を読むと以下のことが分かります
- 次世代営業マーケティングモデルとは何か?
- ハイブリッド型の営業マーケティングモデルとは?
- デジタルの得意な部分は?
- MRの得意な部分は?
- eとリアルの使い分けは?
こんにちは、スターコネクトコンサルティングの水本です。
今回の記事は、製薬業界向けの営業マーケティングの業界専門誌のMonthlyミクスで2022年10月号に掲載した、「eとリアルの使い分けは?」について記載した内容をご紹介したいと思います。
Monthlyミクス10月号でも公開していますので是非、ご興味ある方はご覧ください!
それでは以下にご紹介します!
はじめに
2022年4月よりスタートさせた連載も今回で第7回目となる。本連載ではヘルスケア・製薬業界における、「ハイブリッド型の営業マーケティングモデルとは?」について、戦略・組織・業務の観点から考え方・作り方を考えてきた。今回と次回では、今までの連載の「まとめ」として①「ハイブリッド型の営業マーケモデルとは?」、②「eとリアルの使い分けは?」、③「MRの価値・キャリアを高めるには?」の3点から振り返ってみたいと思う。
ハイブリッド型の営業マーケティングとは?
著者が初めて、本連載で紹介しているハイブリッド型の営業・マーケティングモデルの立上げに携わったのは2018年の終わり頃であった。
当時からも製薬業界では、「eとリアルを如何にして組み合わせるか?」については、論点として挙がっていたが、COVID-19前の段階においては、MRが認知~採用~処方~フォローの全ての段階を担い、対面営業が中心で、eMR等のオンライン営業に関しては、一般的ではなかった。
他業界では、2019年1月に「The Model」という、マーケティング、インサイドセールス、セールス、カスタマーサクセスの分業型モデルが紹介され、各社The Model型の営業マーケティング組織の立上げが活発に行われていた時期でもあった。
著者は丁度、新製品上市の立上げに伴い、オンラインを主体とした、少数精鋭の営業マーケティングモデル構築に携わることになり、「The Model」片手に、ヘルスケア・製薬業界の文脈に即した形とはどの様なものなのかについて手探りで考えていった。(図1参照)
そして2020年。COVID-19により、それまで中心とされていた対面型営業ができなくなり、製薬各社は、3rd party メディアツールの活用をはじめとし、eプロモーションの比重を高めていった。
それまで殆ど行われていなかったオンライン面談も一般的になり、インサイドセールスにあたるeMR立上げを含め、一気に営業マーケティングプロセスのデジタル化が進んだ時期であった。
一方で、2022年。COVID-19から2年が経過し、「デジタルの限界」も感じられる様になり、改めてリアルの良さも考えさせられる時期でもあった。そんな中、次の疑問として上がってきたのが「eとリアルの最適な役割分担は?」であった。(図2参照)
本連載でも何度か掲載したスライドではあるが、図2に、eとリアルの役割分担モデルとして3類型を示した。
製薬業界のパイプラインもここ10年で大きく変貌を遂げ、生活習慣病治療薬中心のブロックバスターモデルから、オンコロジー/希少疾患治療薬中心の構成へと変化していった。
そんな中、求められる営業マーケティング体制も、量を追うモデルから、質を重視するモデルへと変化していったが、図2に示した「分業型モデル」が最適なモデルではないかと思う。
従来の様に全国の全てのエリアにMRを配置出来なくなるとすると、必然的に1MR辺りがカバーするエリアは広範囲になり、足で稼ぐ頻回訪問型の営業は難しくなる。従来であれば頻回訪問を行う中で、医師のニーズを拾い、最適なタイミングで提案を行うことも出来たが、今後はそれも難しくなる。
つまり、「如何にして有望な医師、成果につながる医師を見つけるのか?」というのが、重要になり、その点、eプロモーションやeMRを上手く活用し、「ニーズを拾い、最適なタイミングで現場MRへ連携する」というオペレーション構築が、重要になってくる為、「分業型モデル」は今後の一つの有望な選択肢になってくると思う。
デジタルの得意な部分は?
ここまで、「eとリアルの役割分担モデル」について考えてきたが、役割分担を考えるうえで、「デジタルの得意な部分は?」「MRの得意な部分は?」という点を踏まえ、「どの業務をデジタル、MRが担うのか?」について考えていきたいと思う。
結論から言うと、デジタルが得意な部分は、「製品認知」、「顧客の行動変化の察知」の部分だと思う。
デジタルの強みは何と言っても、「時間的/地理的制限を越えることが出来る」点だと思う。COVID-19を通じて医療従事者のデジタルに対する親和性は高まったため、よりこの強みを活かすことが出来る環境は整ってきた。
図3に示したように、プロセスの前半部分の、「製品認知(製品名、特徴理解)」については「デジタル」に任せ、その結果得られた「顧客の行動変化」を起点に、「eMR」が「本当に興味があり、現場MRに連携すべき医師なのか?」を評価したうえで、現場MRに連携するというプロセスを取るのが良いと思う。
従来、MRが医局前の廊下で待機し、行っていた、「頻回訪問、製品認知、ニーズ察知」といった活動をデジタルで代替し、現場MRは「有効な医師・面談」に特化し、「質の高い面談」を行うという考え方である。
一方で、COVID-19を通じ、「デジタルで製品認知は進んだが、本当に処方/成果に繋がっているのか?」という疑問を抱える方も多くいらっしゃるのではないだろうか?
MRの得意な部分は?
COVID-19から2年がたち、デジタル化が急速に進んだ中、「デジタルの限界」も徐々に見えてきたと思う。その一つが「デジタルで製品認知は進んだが、本当に処方/成果に繋がっているのだろうか?」という疑問である。
著者もオンラインセールスモデルを構築する中で、「ニーズを顕在化させ、クロージングする」といった「コンサルティング機能」は、デジタルでは限界があり、やはりMRが得意な領域だと改めて感じた。
また、製品の使い方に慣れていない、「採用直後」の時期は、製品の使い方や、副作用への対処法等について、担当者から丁寧なフォローを顧客は求めている。
更に、ある程度、使い慣れた「フォロー」の段階でも、頻回でフォローする必要はないものの、必要なタイミングで必要な情報提供を行うことにより、「中長期的な信頼関係を構築」し、ひいては「会社のブランド価値向上」にもつながる。
以上の事からも、デジタル化が、どんなに進もうとも、MRは必要であり、なくなることはないと思う。「デジタルが得意な領域はどこか?」「MRが得意な領域はどこか?」を常に考えたうえで、MRでしか提供できない価値を発揮し続けることが重要である。
eとリアルの使い分けは?
今までで、「デジタルの得意な部分は?」「MRの得意な部分は?」という観点から、「eとリアルの使い分け」について考えてきた。
COVID-19を契機にMR不要論についても囁かれることもあったが、COVID-19の2年間を通じて、デジタルは確かに重要な位置を占めることになったが、MRも変わらず重要な位置付けである、という事が明かになったと思う。
一方で、「MRの役割」は今後も変化していくと思う。(図5参照)
著者が経験した2010年前後のMR活動は、生活習慣病領域の薬剤が中心であり、各社こぞってSOVの最大化に勤めていた時期であった。
各社のMRが医局の廊下で医師が来るのを待ち、製品の「認知~クロージング~処方~フォロー」までの全てのプロセスをMRが行っていた。実質、MRのシングルチャネル化の時代でもあった。
しかしあれから10年が経過し、COVID-19を契機に製薬業界でも一気にデジタル化が進み、eプロモーション、eMR等のデジタルチャネルを活用することが当たり前になり、MRの役割も大きく変化することとなった。
これからの時代は、MRが営業マーケティングの全てのプロセスを担うのではなく、「マーケティング」、「eMR」、「各種デジタルツール」と連携し、それぞれの強みを最大化し、顧客に価値を提供する時代に向かっていくと思う。
この「連携」を上手く機能させるには、自分の担当プロセスだけでなく、その前後のプロセス(マーケティング、eMR)や、各種デジタルツールについても、幅広く理解する必要がある。他の部署の事だから関係ないではなく、周りの部署にも興味を持ちながら幅広い視点で営業活動を捉える視点が、今後益々求められるようになるだろう。
おわりに
2020年のCOVID-19から2年が経過し、各種デジタルツールの導入/活用を製薬各社は急速に進め、「営業マーケティングのデジタル化」は急速に進展した。
これらのデジタル化はあくまで、従来の営業プロセスをデジタルに置き換えただけであり、本丸は今後更に進展が予想される「医療のデジタル化」の中で、どの様に営業マーケティングの有り方を考えるかという観点が重要ではないかと、個人的には考えている。
MRの役割についても、「デジタルツールの活用」に留まらず、「医療のデジタル化」を踏まえ、考えていく必要があると思う。
次回最終回では「MRの価値・キャリアを高めるには?」という点について、「医療のデジタル化」を踏まえ、営業・マーケティングはどの様に変化を遂げるべきか考えていきたいと思う。
⇒第八回:「MRの価値・キャリアを高めるには?」を読む