今回の記事はこんな人のために書いています
- アフターコロナのハイブリッド営業・マーケティングモデルの構築を検討中の営業・マーケティング責任者
- インサイドセールスMR立ち上げを推進することになったが、何をどうすれば良いか分からない営業・マーケティング責任者
- 次世代に求められるインサイドセールスMRの役割・業務を理解し、成長したいと考える現場MR
今回の記事を読むと以下のことが分かります
- 次世代営業マーケティングモデルとは何か?
- マーケティング・インサイドセールス・セールスの役割は?
- どの様な営業・マーケティング体制にしたいのか?
- 役割分担モデルは?
こんにちは、スターコネクトコンサルティングの水本です。
今回の記事は、製薬業界向けの営業マーケティングの業界専門誌のMonthlyミクスで2022年7月号に掲載した、「組織編:自社の状況に即したハイブリッド型モデルとは?」について記載した内容をご紹介したいと思います。
Monthlyミクス7月号でも公開していますので是非、ご興味ある方はご覧ください!
それでは以下にご紹介します!
はじめに
前回の連載では、「戦略編:誰に?どの様に?プロモーションを行うか?」について、1.「カスタマージャーニーとは?」、2.「プロモーション戦略の全体像は?」、3.「各施策の効果/スケジュールは?」という3点について、自社製品を「誰に?」「どの様に?」プロモーションを行うのか考えてきた。「誰に?」という部分については、従来の様に「集団」として属性を捉える「ターゲット層」という考えに加え、敢えて対象医師を「個人」として捉え、より解像度を上げることによりメンバー間で共通認識を併せながら、「ペルソナ」像として纏めてきた。また、「どの様に?」という点については、「ペルソナ」像を元に、対象医師が当該製品を「認知」してから「採用・処方」に至るまでの行動プロセスを「カスタマージャーニー」に纏め、その結果を元に、各施策の関係性を「プロモーション戦略の全体像」として纏めた。第4回となる今回は、前回考えた「プロモーション戦略の全体像」を出発点として、プロモーション戦略における、「マーケティング・インサイドセールス・MR」の役割を意識しながら、「自社の状況に即した、営業マーケティングモデルとはどの様なものなのか?」について考えていきたいと思う。
マーケティング・インサイドセールス・セールスの役割は?
第3回の戦略編では、図2の様に、対象医師の行動を理解した上で、目標達成に必要な施策の関係性を「プロモーション戦略の全体像」として纏めた。
ここでは、「プロモーション戦略の全体像」を前提に、「マーケティング・インサイドセールス・MRはどの様な役割を担うのか?」について考えていきたいと思う。
例えば今回、限られたMRリソースの中で、デジタルを活用しながら、全国をカバーする「少数精鋭の営業マーケティング体制」を検討していたとしたとする。この際、リアル訪問するMRのカバーする範囲は広くなる為、手あたり次第訪問するのではなく、ある程度当たりを付けて、採用につながりそうな有効なアポイントに限定して、優先順位を付けながら採用・処方アップを目指していくことが求められる為、オンラインで全国を効率的にカバーする「インサイドセールス」を「マーケティング」と「MR」の間に位置付ける必要がある。
イメージとしては、図3に示すように、営業プロセスを「マーケティング」「インサイドセールス」「カスタマーサクセス」で共業するプロセスである。
仮にこのモデルを採用するのであれば、MRの役割は以前と変化する。
従来のMRは、1.「認知拡大」はマーケティングと共に担いながら、2.「有望医師獲得・育成」~3.「採用」~4.「フォロー・処方増」の全ての段階を担う組織であったと思うが、このモデルを採用した場合、1.「認知拡大」~2.「有望医師獲得・育成」は「マーケティング」「インサイドセールス」に任せ、「MR」は3.「採用」~4.「フォロー・処方増」が主な役割になる。
具体的には、「マーケティング」が、デジタルを活用し、各種コンテンツ、3rd Partyメディア、Web講演会などで「広範な医師へ効率的な情報提供」を行い、「認知拡大・リード獲得」の役割を担い、「インサイドセールス」が、「有望」な医師、つまり「直近で採用・処方につながる医師なのか?」について、架電・オンライン面談等を通じて評価していく。また、興味はあるが、すぐに必要ではないという「中長期的に対応する必要がある医師」についても、継続的にフォローを行い、タイミングが来た段階でアポイント化するという「育成」という役割も担うことになる。
「MR」は、インサイドセールスから連携された「有望」なアポイントを中心に、現地で医師をフォローし、担当施設で当該製品の「採用」を行い、医師と長期的な関係構築を行いながら、「フォロー/処方増」を行っていくことになる。
この様に、戦略編で作成した「プロモーション戦略の全体像」を元に、「マーケティング」、「インサイドセールス」、「MR」は、対象医師の処方・採用プロセスのうち、「どの部分を担うのか?」を意識して検討をおこなうことで、「各組織の役割」が見えてくる。
どの様な営業・マーケティング体制にしたいか?
ここまでで、「プロモーション戦略の全体像」における、「マーケティング、インサイドセールス、MRの役割」について大まかに考えてきたと思うが、議論の結果を図4に纏め、言語化を行っていく。
図4では、新薬上市から1年が経過し、限られたリソースの中、「対象エリア」、「TG医師拡大」を行う為に「インサイドセールス組織」を立ち上げたことを例として記載している。
インサイドセールス組織立上げ時には、この言語化のプロセスは必ず実行して欲しい。ともするとインサイドセールスは、従来の「テレアポ」組織と混同されることも多いが、もし、専門性と効率性を高めた、「マーケティング」「インサイドセールス」「セールス」の共業プロセスを目指すのであれば、インサイドセールスは「マーケティング」「セールス」のハブとなり、連携を促す重要な役割を担うことになる。
実際にプロセスが開始されると、「なぜこの様な確度の低いアポイントを営業に回してくるのか?」「勝手に自分の担当先でアポイントを取らないで欲しい」などの「営業との連携」に関する課題が多く上がってくる。
この手の課題に関しては特効薬のある対応策はなく、マネジメント層が本モデルの意義をしっかりと明文化し、それを職種間の共通認識として、繰り返し日常のコミュニケーションの中に溶け込ませていくことしかないと個人的には思っている。
その際に、コミュニケーションの土台となる共通認識について、立上げ時に、しっかりと言語化し、共通認識を醸成しておくことが非常に重要になってくる。新組織の、「ビジョン」「目的」「必要な機能・要素」は、立上げメンバーでしっかりと議論し、言語化までを行っておくことをおススメする。
役割分担モデルは?
ここまでで、どの様な営業・マーケティング体制にしていきたいのかについて、大まかにチーム内で認識のすり合わせが出来てきたと思うが、次に、これまで議論してきた各組織の役割をベースに、ハイレベル業務フローに落とし込んでいく。
一つの例として、図5に1.「分業型」、2.「混合型」、3.「独立型」の3つのパターンを提示する。
連載第1回目でも、この3つのパターンについて触れたが、簡単に振り返ってみたい。
①「分業型」は、インサイドセールスが「採用前」の段階までを担い、有望顧客・病院を「現地のMR」に連携していくパターンであるが、個人的には、スペシャリティ領域の薬剤で有効なモデルではないかと思う。
これまでの経験からも、顧客が製品に慣れていない「採用時」「採用直後」は、丁寧にフォローし、製品に対する納得感・信頼感を醸成することが、その後の処方につながると思う。
その点では、一般的にスペシャリティ領域の薬剤は、「大学・大病院が主体」かつ、採用に当たり、「製品の詳細な説明が必要になる」場合が多い。「採用プロセスは複雑」かつ、「複数の医師、関係者が関与することが多い」ことを考えると、顧客がまだ製品になれていない「採用時」、「採用直後」は、可能であればオフラインで丁寧に対応する方が良いと思う。
一方で、③「独立型」は、「開業医」主体のマーケットの製品で、広く全国をカバーする必要がある場合は、有効なモデルだと思う。
開業医における製品採用は、大学大病院に比べ、院長のみとの面談で採用に至ることが多く、採用プロセスもシンプルなことが多い。オンラインセールスでも十分に、対応が可能であり、何より一人の担当者が、対応可能な施設数が増える為、仮に採用率が少々落ちたとしても十分、面談件数を確保することが出来、トータルの売上増加が期待できる。
最後に、②「混合型」であるが、これは①「分業型」、③「独立型」を組み合わせた形であり、一見両モデルの良い部分を取り入れている様に見えるが、同じ組織の中に2つの異なる体制を両立させるため、設計・実行の難易度は高いと思う。初めはシンプルに①「分業型」、③「独立型」の何れかのモデルで開始し、業務プロセス、組織間連携を確立したうえで、必要に応じて導入するという順番が良いのではないかと思う。
「人材要件」、「必要人員数」は?
ここまでのプロセスで、マーケティング、インサイドセールス、セールスのハイレベルでの役割分担モデルは決定し、各職種の役割についても大まかに議論することが出来たと思う。
営業・マーケティング組織の「ハコ」となる部分の大枠は議論することが出来たと思うので、次にこの「ハコ」を担う、「人材要件」と「必要人員数」について検討していくことになる。
ここでは詳細は割愛するが、「人材要件」に関しては、各職種の「必要スキル・経験」、「必須要件、歓迎要件」、「人物像」などといった点について議論を行い、明らかにしていく。
また、「必要人員数」の試算では、戦略編の「採用施設シュミレーション」の部分で試算した「目標採用施設数」の達成に必要な「商談数」、「リード数」を創出する為に、「必要な人員数はどの程度必要か?」といった点について明らかにしていく。
最終的には、「1営業当たりどの程度の売上が求められるか?」といった経営的な側面も考慮し、必要な人員数を調整していくことになる。
おわりに
ここまで、前回考えた「プロモーション戦略の全体像」を出発点として、プロモーション戦略の全体像の中での「マーケティング・インサイドセールス・MR」の役割を意識しながら、「自社の状況に即した、営業マーケティングモデルとはどの様なものなのか?」について考えてきた。
本モデルは2019年頃からSaas業界で各社取り入れることが多くなった「The Model」という営業プロセスを元に、当初はヘルスケアスタートアップを中心に採用されたモデルであったが、近年製薬各社でも「eMR」を立上げ、現地のMRと連携するモデルが採用されるようになってきたと感じる。
一方で、実際に業務プロセスに落とし込む中で、上手くいく部分といかない部分もコロナ禍のオンライン営業を通じて徐々に明らかになってきた。
次回以降は、「業務編」として、今まで考えてきた「営業・マーケティングモデル」を「業務プロセス」に落とし込んでいく際のポイントについて考えていきたいと思う。